烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)とは
「烏枢沙摩明王は火の神様で、いっさいの悪や不浄のモノ(特にトイレで)を焼き尽くし、清浄な場所に変えてくれる豪快な神様です」
別名を「火頭(かず)金剛」「穢積(えしゃく)金剛」「不浄潔(ふじょうけつ)金剛」「受触金剛」と言います
ですが…
一般的には「トイレの神様(厠神)」として有名です
漢字表記は「烏枢瑟摩」、「烏蒭沙摩」、「烏瑟娑摩」、「烏枢沙摩」など複数あります
さらに明王とは、仏教と古代インドのバラモン教が融合した密教の仏であり、五大明王として祀られます。
五大明王は不動明王を中心に、真言宗では東に降三世(ごうざんぜ)明王、南に軍荼利(ぐんだり)明王、西に大威徳(だいいとく)明王、北に金剛夜叉(こんごうやしゃ)明王が配されますが、烏枢沙摩明王は天台宗(台密)において北の金剛夜叉明王の代わりに一尊として祀られる明王です。
もともとは古代インド神話において「アグニ(Agni)」「ウッチュシュマ(Ucchusama)」と呼ばれた炎の神を起源とし「ウスサマ」はサンスクリット語である「Ucchusama」の音写となります
「Ucchusama」は穢跡、穢積、不浄潔、穢れの浄化を意味すると多くの記事にありますが、焚焼穢悪(汚穢と邪悪を焼き払う)であったり、混雑・錯乱などの解釈がされているようです
「agni(アグニ)」はこれを語源とする言葉として「ignis」はラテン語で火、「ignition」は英語で発火,点火などがあり、いずれも火に関連する言葉です
人間界と仏の世界を隔てる天界の「火生三昧(かしょうざんまい)」という炎の世界に住み、煩悩が仏の世界へ波及しないよう、炎によって煩悩や欲望を焼き尽くします
トイレの神様と言われる所以
烏枢沙摩明王がトイレの神様と言われる所以は、便所(東司)が古くから排泄をする汚れた場所であるとともに、怨霊の通り道とされ忌み嫌われる場所でもありました。烏枢沙摩明王はその汚れ、穢れを焼き尽くし浄化してくれるのでこのように呼ばれています。
この所以は下記のお話に由来します
『釈迦入滅の際、多くの神々が釈迦のもとに訪れている中、梵天王という神は一人だけ無数の天女と遊び戯れて釈迦のもとに参上しませんでした。
そこで神々達が迎えに行きますが、梵天王は城の濠を術を用いて糞尿など不浄なもので満たし、神々達が近づくことができないようにしました。
そのとき釈迦は烏枢沙摩明王を使わすと、明王はこの濠を指差し不浄の物を変じて大地とし、梵天王を伴って釈迦のもとに参上させました』
※『霊要門』『禁百変』という経典が出典
つまり、不浄・不潔なモノ(糞尿)を焼き尽くして浄化してくれるので、主に不潔な場所(トイレ)に祀られることになった神様ということです
余談ですが、沖縄にはフルヌカンというトイレの女神さまがいるそうです
烏枢沙摩明王の御利益
【ご利益】
病気平癒、安産成就、子孫繁栄、家門繁栄
商売繁盛、金運上昇
便所/台所の浄化、男児の子授けなど
(確認できたものを列挙)
すべての障害と穢を焼き尽くす功徳があり、至福・敬愛・災難・調伏の利益が得られるとされています
その他に、古木の精霊による祟り、毒蛇の害、悪鬼の祟りを取り除く。さらには安産と夜泣き止めのご利益も
その他、トイレ掃除をすると金運が上がるというご利益も有名ですね
さらに「烏芻沙摩変成男子法」というお腹の中の赤ちゃんを男子に変えるというとんでも秘法もあるようで、男の子が欲しいご夫婦は烏枢沙摩明王をお祀りしてみてはでどうでしょうか
便所の守護神でお産の神とも言われる烏枢沙摩明王は、人間の下(しも)にご利益の高い神様ですね
烏枢沙摩明王の真言
A:オン・シュリマリママリ・マリシュシュリ・ソワカ(烏枢沙摩明王解穢神呪、解穢真言とも)
B:オン・クロダノウ・ウンジャク(大威怒烏芻渋麼儀軌)
A:帰依し奉る 幸福をよく守護される方よ、成就あれ
B:帰依し奉る 憤怒の尊よ
経典儀軌に不空訳『大威怒烏芻渋麼儀軌経』、阿質達霰訳『大威力烏枢瑟摩明王経』などがあると浄土宗大辞典に記載あり
烏枢沙摩明王の梵字
読み方:ウン(ウーン)
原音:hūṃ(フーン)
※金剛部の通種字
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